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法律家が懲戒・罷免されるケース

法曹三者が論議を交わすイメージ

 

法曹三者(弁護士・検察官・裁判官)などの法律家は、人の人生を左右する重要な責務を担っています。

 

責任が大きい職業のため、ルール違反への罰則は厳しい処分を下されるイメージを持たれがちですが、実際には民間企業や公務員よりも甘い処分になることが多いです。

 

実際にどのようなことをすると法律家が懲戒・罷免になるのか、過去の事例を交えながら解説いたします。

 

 

弁護士の懲戒事例

 

弁護士の懲戒は官報へ掲載されるほか、「自由と正義」という日弁連の機関誌にて毎月懲戒情報が掲載されています。
過去にあった主な懲戒事例をご覧ください。

 

弁護過誤 民間企業でいうコンプライアンス違反に該当する事案
事件放置 事件処理をせずに放置した(主に数年単位)
過大報酬 法外な報酬を徴収した
金銭問題 依頼者との金銭貸し借り禁止のルール違反など
業務外の問題 業務外で問題のある騒ぎを起こす
横領 勤務先やクライアントのお金を横領する
捏造 事実に反する書類や証拠の作成
非弁提携 弁護士以外から仕事の斡旋を受けた
業務違反 業務停止処分中の業務など
宣伝、契約斡旋の問題 過剰な広告、強引な勧誘、絶対に勝てる等の誇張表現等

 

特に多いのは横領と過大報酬で、お金の絡んだトラブル事例が多いです。

 

上記に該当しないものでも、世間の見本となるべき弁護士は、一般常識から外れるような不適切な言動をすれば懲戒処分を受ける可能性があります。

 

 

4種類の懲戒処分

 

弁護士の懲戒処分は以下の4種類があります。

 

  • 戒告
  • 2年以内の業務停止
  • 退会命令(資格は残るが弁護士として活動できなくなる)
  • 除名(3年間弁護士の資格を一時的に失う)

 

弁護士の懲戒処分は日弁連の懲戒委員によって決められ、懲戒内容に不服がある場合は異議申立を行うことができます。

 

参考元URL:日本弁護士連合会 懲戒制度

 

 

罷免はない

 

4種類の懲戒処分をご覧になれば分かる通り、もっとも重い懲戒処分は除名で3年経過すれば弁護士として再び活動することができます。
懲戒免職や罷免など職を永久に失うことはありません。

 

 

法律事務所も懲戒を受ける

 

弁護士事務所も4種類の懲戒処分を受けるケースがあります。
2017年には全国展開するアディーレ法律事務所が、事実とは異なる宣伝を行ったことで2ヶ月間の業務停止処分を受けました。

 

 

検察官の懲戒事例

 

主に司法試験合格者(弁護士)がなる検察官は、公務員の扱いになるため弁護士より厳しい懲戒処分を用意し、実際に罷免を受けた事例が多数あります。
まずは検察官が受ける4つの懲戒処分をご覧ください。

 

  • 免職(罷免)
  • 停職
  • 減給
  • 戒告

 

免職事例

 

過去に検察官が懲戒免職(罷免)処分に受けた事例をまとめました。

 

  • 詐欺・公務員職権濫用等
  • 不適切交遊・セクハラ
  • 文書偽造
  • 窃盗、住居侵入、盗撮
  • 証拠隠蔽
  • 犯人隠避(2件)

 

上記は2002年以降の懲戒事例で、犯人隠避以外は全て1件・合計7件の懲戒免職事例があります。

 

 

その他の懲戒事例

 

停職 減給 戒告 懲戒処分にならなかった事例

盗撮
痴漢
児童ポルノ所持
ワイセツ
セクハラ

指導監督不適正
自動車運転過失致死
業務処理不適正
業務上過失傷害
道路交通法違反
指導監督不適正
傷害
痴漢
セクハラ
etc…

泥酔による迷惑行為
確定申告の怠慢
器物破損
その他、減給と同等の内容

賭け麻雀
(訓告・黒川元検事長)

 

どの懲戒事例に該当するかは、重大性を考慮して決定されます。
実際に罷免の重たい処分を下す事例がある一方で、痴漢や盗撮、賭け麻雀等の明確な犯罪をしても軽微な内容だった理由で軽い処分になった事例が多数あります。

 

 

裁判官の懲戒事例

 

裁判官は法律家の中でも特別な存在で、公務員にも関わらず憲法にて以下のように定められています。

 

憲法78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない
憲法80条2項 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない

 

このように、重たい処分が出にくい環境ですが、裁判官弾劾法に基づく裁判官弾劾裁判にて罷免することが可能です。
罷免を受けた場合でも5年経過してから法曹資格回復の裁判を起こして認められれば資格が回復するルールになっています。

 

 

裁判官弾劾裁判事例

 

これまでに起こった裁判官弾劾裁判は以下の9例です。(日程は裁判日)

 

日時 判決 訴追事由

1948年11月27日

不罷免

闇物資の調達を目的に欠勤、その後証拠の隠蔽を図る

1950年2月3日 不罷免 知人が闇物資の売買で逮捕され、家宅捜索の日程を伝えて証拠隠滅するように指示
1956年4月6日 罷免 署名捺印した白紙令状を作成して裁判所職員に持たせていた
1957年9月30日 罷免→資格回復 申立人から800円相当の饗応を受け、その後もみ消しを図った
1977年3月23日 罷免→資格回復 首相への偽電話録音テープを新聞記者に聞かせた
1981年11月6日 罷免→資格回復 事件を担当する弁護士から18万円相当の物品を収賄した
2001年11月28日 罷免 児童売春
2008年12月24日 罷免→資格回復 女性に対するストーカー行為
2013年4月10日 罷免 電車内で女性のスカートの中を盗撮

 

 

その他の懲戒処分

 

裁判官の懲戒処分は裁判官弾劾裁判で争われる罷免の他に、戒告・1万円以下の過料による3種類しかありません。
過去にはFacebookでの不適切投稿や、殺人事件の遺族を侮辱、政治運動、記録紛失で戒告や過料の処分を受けた事例があります。